誠実という才能が生んだステーキ。

食べ歩き ,

究極のステーキの焼き方。
YouTubeには様々な動画がアップされている。
だがこれがそう簡単にいかないことを知っているのは、料理人だろう。
正解などない。
肉の種類も違えば、火力や道具も、室内温度も違う中で、究極はできない。
長年の経験と、洞察力と観察力、なにより持って生まれた才がなければ、うまく肉は焼けない。
ブリアサヴァランは言った。
「料理人には誰でもなれる。だが肉焼き師は天武の才能である」と。
鹿児島経産牛とブラウンスイスの肉が寝かせてあった。
700gを頼むと主人は言った。
「それでは二種類焼きましょう」。
焼かれて出された姿は、ほぼ同じである。
表面がガリっと黒く焼き固められ、中は一面ロゼ色に仕上げられている。
噛めば、旨みが折り重なった焼き面に歯があたり中から肉汁が滲み出る。
経産は歯切れ良く。肉のエキスが一気にほとばしり、「うっ」と、唸らせる。
ブラウンスイスは、元々アルプスの厳しい山中で育てられた牛だけに、筋肉を感じさせるかみごたえである。
クリッとした肉を噛んでいくうちに、甘いような、優しい肉汁が流れ出す。
血筋も育ちもまったく違う牛である。
同じように焼いてはうまくいかない。
経産は、一気に焼き色をつけるように焼いていく。
ブラウンスイスは、焼いては休ませ、焼いては休ませて焼いていったのだという。
二つとも、特性を見事に生かした焼き方だった。
焼き方の説明をする松居シェフの目には、子供のような純真な喜びが溢れている。
目の奥に見える情熱に
「もっとこの人の焼いた肉が食べたい」と、
心は素直に疼いた。
レバーのステーキも、白インゲン豆とギアラ、ハチノス、コリコリ、盲腸の煮込み、自家製あハムも素晴らしく良かったよ。
サカエヤから最も近いレストラン、南草津「KICO」にて。