入院中、ずっと食べたかった料理がある。
場所は軽井沢「喫茶ひといき」の「チキンカツ デミグラスソース」である。
病室のベッドの上で、幾度もシミュレーションをした。
ナイフの刃を立てて、カツを切る。
ソースをつける。
その時の音、触覚、香り、手応え。
口に運ぶ。
食感、香り、味わい。
すかさずご飯を食べる。
ああ早く食べたい。
退院後、4日経って実現した。
目の前には、黄金色に輝くチキンカツが鎮座している。
チキンカツはディープフライではない。
片面だけに、チーズ入りの細かいパン粉をつけ、おそらくオーブンで焼かれている。
だから衣が香ばしい。
衣とソースだけでご飯が食べられるくらいである。
そこへ鶏肉の重みが加わる。
肉汁が弾け、肉を断ち切る喜びが加わる。
無我夢中で食べた。
途中で家人の食べた、ハンバーグや、チキンソテーシャスールソース、牛タンカレーを挟みながら、一心不乱にチキンカツを食べた。
幸せは、すぐそこにある。





