アップルパイは、冬の食べ物、暑い季節は似合わない。
りんご自体も甘く酸っぱくなって、実力を発揮し、リンゴの甘みとパイの優しさが、冷えきった身体を温めてくれる。
僕はそんなアップルパイが食べたくなると、この店を目指す。
高い天井がゆったりと広がる店内に座り、「アップルパイとコーヒーをください」と、頼む。
ただそれだけなのに、何か優雅な気分になるのです。
しかもこの店では、毎朝りんごを切って煮詰め、パイに詰めて焼いている。
だから出来れば、午前中に行って、出来立てをいただきます。
出来立ては、なんともパイが香ばしく、リンゴの甘酸っぱさを引き立てる。
食べれば、柔らかくなったりんごが舌にしなだれて、甘えてくる。
そいつを上顎と舌でゆっくり潰してやる。
パイの豊かな風味にりんごの命が滴り落ちて、春の陽だまりに包まれたような満ち足りた気分となり、眼を閉じる。
そこでコーヒーをひと啜り。
丹念に入れられたこの店のコーヒーには、ミルクを小さじに1杯、砂糖を小さじ半分程入れて混ぜると、俄然美味しくなる。
苦味や酸味の角が取れてまろやかになり、穏やかにアップルパイに寄り添うのです。
できたてのアップルパイと上質なコーヒーで過ごす、充実した朝のひとときである。



