「酒呑みのまよい箸」浅野陽
東京芸術大学教授で名陶芸家であり、稀代の食通であった浅野陽氏の食のエッセイ。
旬の食材を扱うこと味わうこと、作ること。
それぞれの食材の持ち味。
器と食材の関係など、味わいの達人になるべき卓越した考えが、多く述べられている。
さらには、文章の端端から「食べることが好きでしょうがない」という感情が溢れていて、心が和やかになる。
まさに食いしん坊の憧れである。
写真入りで紹介される自ら考えてもてなした料理のレシピは、創造力と食欲喚起力に溢れ、どんな食通でも思いを初めてしまう。
「努力もせずにうまいものを食べようなんていうのは、種を撒かずに稲を苅ろうというのと同じで、おこがましいのです」と、その食への執念には、心震える。