庶民的商店街に店を出す。清潔感に富む白木を配した店内は、新店ながらしっとりとした空気感が漂う。
まずは「酒肴盛り合わせ」一人前六百円を。ある日のそれは、しっとりと仕上がった、鯖の燻製、わさび漬け、切り干し大根の沢庵の煎り煮、92歳になられるというおばあちゃんの糠漬け、きんぴらごぼう、鳥肝の生姜煮。どれもしみじみとしたうまさがある。またお奨めは、野菜料理を得意とする料理長の皿。ある日の「野菜料理盛り合わせ」は、大根と金時人参のなます、玉ねぎと椎茸酢漬け、雪下蕪酢漬け、八つ頭子のきぬかつぎ、わかさぎ南蛮漬け、自然薯むかご、蓮根きんぴらなど、いずれも土の香りと温かみが伝わる料理の数々に、心が座り、酒がうまい。
その他上品な味わいの芹入り「出汁巻玉子」(小六百円~)、味が染みた大根に顔がほころぶ、「鴨のかえし煮」、子のうまさが際立つ「シシャモの炙り浸し」 円など、酒飲みのツボを押さえた肴が並ぶ。
毎日石臼引きして撃たれるそばは、数種あるが、ぜひ「唎きそば」(二種千百五十円、三種千六百円)を試されたい。産地、挽き方、つなぎ割合を変えた、数種のそばが食べられる。例えば、甘い香りが鼻に抜ける、新潟産二八のそば。清々しい香りが胸に広がる、秩父産十割そば、穀物感のある野趣に富む香り漂う、打っってから三日間寝かせたという福井産十割そばといった具合。そば好きならたまらぬ品書きである。
酒は四季桜、春霞、菊姫など10数銘柄ほど用意されている。