松茸のポタージュである。
ポタージュと言っても、ミルクもクリームもジャガイモもタマネギも入れていない。
とろみはすべて、松茸である。
大量の松茸を澄ましバターで、じっくりじっくりスエする。
そうしてミキサーにかけ、鶏の肉だけでとったフォンと合わせ、香りづけの澄ましバター少量と塩少々で整え、刻んだ松茸を浮き実として入れた、スープである。
運ばれてきた瞬間、あたりは赤松の林となる。
松茸の香りの湯気が立ち上って、顔を包む。
口に運んで、目眩がした。
太い松茸を口にねじ込まれたような、陶酔がある。
圧倒的でありながらも優しい。
舌を過ぎ、喉元に落ちた後から、再び松茸の香りが押し寄せる。
余韻だけで頭が揺さぶられる。
マグロのヌーベ。野菜のおひたしのモザイク。いぶりがっこのミルフィーユ。フォアグラのパンケーキ。フグとレタスのサラダ。一夜干しあゆの素揚げ 鮎のソース。ズワイガニの茶碗蒸し柚子胡椒あん。ハタハタのトムヤム風。
秋田の食材に敬意を払いながら、数々の名作を生み出してきた角館「じん市」の新たなスタートである。
あの「NOMA」のレネ氏も訪ねて感銘を受けたという、秋田「J一行樹」にて。
全9皿料理の詳細は。別項にて