席についたら、まずそば味噌と燗酒を頼む。
ここのそば味噌は、いつも季節の野菜が混ぜられていて、野暮ったいだけではない風情がある。
先日はボタン胡椒だった。
青い香りとほのかな辛味が味噌の甘みに、光を刺す。
そして燗酒を飲む。
この量なら、一合半はいけるな。
残り半合は、穴子とキュウリの酢の物で行ってみよう。
運ばれてくると,結構な量がある。
仕方ないもう一合おねがいしようか。
ほろ酔いとなったところで、そろそろそばといってみよう。
せいろは、ご主人が定期的に訪ねているという、徳島県祖谷の在来種である。
ずるる。ずるる。
そばの下三分の一ほどをつゆに浸け、向こう三軒両隣に聞こえるくらいに音を立てて手繰れば、青臭い草の香りが喉にぶつかり、ほのかな甘さが舌に残る。
うむ。いい。
続いて穴子天ぷらそばをお願いした。
見事に穴子の滋味を引き出して、カリッと揚げられた天ぷらに笑う。
小さな丼に入れられ、上品なつゆの中に入れられたそばは、温められたことによって、少し甘みを増している。
穴子の天ぷらの端を、ちょいとつゆにつけてみるのもいい。
天ぷらには甘汁の味が付き、つゆには油が少し浮いて、かけそばと天ぷらが一緒になろうっていう、気配が生まれる。
少しだけ残しておいた燗酒を、このつゆを肴
にして飲むのもいいねえ。
ああ、ごちそうさまでした。
良き時間でした。
両国「江戸そば ほそ川」にて。
両国「江戸そば ほそ川」
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