「シェイノ」には何度も伺わせてもらっているが、久しぶりにいただいた、
「仔羊のパイ包み焼き マリアカラス風」である。
おそらく10数年ぶりかもしれない。
大変ご無沙汰しておりました。
もうすでに食べなくとも、味はわかっていると慢心しておりましたことをお許しください。
仔羊、フォアグラ 、トリュフ、ペリグーソース、どれ一つ突出することなく、一つの美へと登っていく味わいに、陶然となったのである。
赤ワインやポルト酒などを、文字通り湯水のように使ったソースは、フランス料理が持つデカダンスとエレガンスに満ちていて、仔羊の滋味と出会い、絶対的な輝きを放つ。
ああ、食べ終わってもう二週間以上経ちますが、いまだに余韻として蘇ります。
「伝統を持たない創造には持続力がない」と、井上シェフはかつておっしゃっていましたが、その真味を改めて噛みしめました。
これこそ、100年続くレストランへ向けて走り続ける「シェイノ」の、底力なのである