きつねうどんにするか、卵とじうどんにするか。
散々悩んだ挙句、きつねうどんを頼んだ。
しかし卵うどんへの想いが断ち切れず、出た言葉は「きつねうどんの卵とじをください」だった。
じわじわ、じゅわ。
分厚いお揚げさんを5時間炊いたというきつねは、中から甘辛いつゆが染み出して、お揚げさんのコクや淡い甘みと一緒になりながら、喉に落ちていく。
ふんわり閉じた卵は、唇に舌に優しく触れながら、柔らかな甘みを伸ばす。
しかし思う。
なぜ欲張ってしまったのか。
きつねなら、きつねうどんだけでよかった。
卵とじなら、卵とじうどんだけでよかった。
欲をかいたがために、うどんとお揚げさん、卵とうどんという両者の蜜月が、ぼやけてしまった。
うますぎるのには、問題がある。
反省しきり。
でもこれだから、うまいもんを求めていくことはやめられない。
一乗寺「そば鶴」にて・