フランス料理のソースは、フランス料理の思想であり哲学であり、フランス料理がフランス料理として成り立っているエスプリそのものである。
1800年台初頭に、マリー・アントナン・カレームによって体系化されたソースは、世界中のオートキュイジーヌに浸透し、西洋料理の冠たる位置を示してきた。
「ソースはフランス料理を輝かせるもの、フランス料理の誇りである。ソースのおかげでフランス料理は現在の高い地位を獲得し、保っているのだ」キュルノンスキー
「ソースは料理の根底を成す要素である。ソースがあるからこそ、フランス料理は世界の料理の頂点に登りつめ、今もそこに立っているのだ」エスコフェ
などと、約200年強、世界のトップを走り続けている要素となっている。
そのソースを主題とし、同じ食材に二人のシェフがソースを作るという料理会が行われた。
京都「ドロワ」の森永宣行シェフ42歳と、「ラフィナージュ」高良康之シェフ57歳である。
ホワイトアスパラガス、鯉、仔羊、ショコラを主食材として、お二人が様々なソースを合わせていく。
最後に感想を聞かれ、僭越ながらこんなことを話した。
「森永シェフのソースと料理は、フランス料理が好きになって、食べ始めた30代の女性といただきたい。溌剌とした躍動感があって、きっと彼女がさらにフランス料理の魅力にハマっていくのが見えます。
高良シェフのソースは、50歳ごろの長らくフランス料理を食べてきた女性といただきたい。複雑でいながら丸く、混沌としてながらも軽やかな不思議があって、何より色気がある。様々なフランス料理を知っている彼女が、そのミステリアスさに気づいて、さらに深みにはまって恍惚になった顔が浮かんできました」。
勝手な夢想ではあるが、僕自身あまつさえフランス料理の深淵を覗き見た震えがあって、さらにこの料理が好きになったのであった。
「TRUFFE」
Sauce bechamel
ソースベシャメル 森永シェフ
『ASPERGE BLANCHE』
Sauce hollandaise ソース・オランデーズ 高良シェフ
Sauce beurre garumソース・ブール ガルム
『CARPE』
Sauce marinière
ソースマリニエール 高良シェフ
Sauce genevoise
ソース ジュヌヴォワーズ 森永シェフ
『AGNEAU』
Sauce fourme d’Ambert
ソース・フルムダンベール 高良シェフ
Sauce palourde à la menthe
ソース・パルルード・ア・ラ・マント 森永シェフ
『CHOCOLAT』
Sauce aux olives et morilles
ソース・オリーブ・エ・モリーユ 高良シェフ
Sauce agrumes brûlée au whisky
ソース・アグリューム・ブリュレ・オ・ウィスキ 森永シェフ