松茸にふぐ、トリュフにキャビア、フカヒレにツバメの巣。
世にゼータクなものはたくさんあるが、ズワイガニほど、食べて後ろめたくなるものはない。
おかーさん、娘よごめんなさい。
○○君よ、○○さんごめんね。僕は今、カニを食ってます。と、謝りたくなる。
それなのに、先日は「界 加賀」で、一人2ハイも食べてしまったのだから、重罪である。
香箱に始まり、焼きカニときた。
炭火で焼かれたカニたちが身悶える。殻が焦げて、あたり一面に香ばしい香りが漂いだす。
香ばしさに包まれたカニの身が、舌の上で甘く爆ぜる。
続いて甲羅を焼けば、ミソがグツグツと沸き立って、早く食べよと叫びだす。
ミソを食べ、いやミソをすすり、少し残すと酒を注いで、再び炭火にかける。
ああやめて。
ミソ酒を肴にして、酒が飲めるじゃあないか。
透明な身は刺身である。甘い汁がタラタラと唇や歯肉、上顎や舌や喉の粘膜をさすって、堕落させる。
カニを山芋で包み三つ葉あんをかけた「養老蒸し」、カダイフ使った「カニフライ」を挟んで、先日書いたメインイベント「蟹のしめ縄蒸し」。
最後は蟹鍋に蟹雑炊。
これだけ食べるとゼータク感が麻痺してきて、「ああ蟹ね」となるかと思いきや。ますます後ろめたい感が増長して、心の中では「ごめんなさい」と謝りながら、顔は笑いっぱなしという不甲斐なさ。
ああ本当にすいません。
世にゼータクなものはたくさんあるが
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