セップ茸をバターで炒め、エシャロットを合わせ、塩胡椒し、パセリをふった料理である。
ただそれだけが、どうしてこんなにおいしいのか。
バターと出会ったセップの、心を勃起させる香り、ほのかに甘く妖艶な味わい。
一口で、顔も、体もくにゃくにゃにしちゃう攻めがある。
そう、このセップは、セップである以上にセップなのである。
「セップが持つ糖分を少し除いてから、じっくり蒸していくんです」。
そう斎須さんはおっしゃった。
なんと25分かけて焼き上げるのだという。
それでないと、こんな焼き色はつかない。
焼き色が付きながら、ムースのようにふんわりと、水分を保ったまま焼きあがらない。
簡潔な技の奥にある深みに震える。
「フライパンで同じように焼けって言われても、僕はできない」
同席した料理人は、そうつぶやいた。
コートドール