血の味。肝の味。
分厚く切られた鴨の胸肉に齧りつく。
数千キロもかけて越冬しにきた真鴨の、命がけの滋味が、咀嚼するたびに溢れ出す。
「どうだ、俺ってうまいだろ」。
どうだ、どうだとたたみかける。
鴨が命に訴える。
合間に緻密な肉質を持つ、ミラノ蕪の優しさにほだされながら、また鴨肉へとフォークが伸びる。
ソースの記憶がないほど、ソースは主張せず、鴨のまっしぐらの味をそっと支えている。
その心根がたまらない。
ああ、もし許されるならこの場で立ち上がり、「命を食らってるぞぉー! 最高だあ」と叫びたい。
コートドール