神田 香川一幅

うどんとのディープキス

食べ歩き ,

この店の極め付けは、「釜玉バターうどん」にある。

白きうどんを黄身の黄色に染めていく過程がたまらない。

そこにバターも加わって、うどんは薄黄色となり、艶やかさを増していく。

「つるるん」。

生きている勢いを感じさせながら登ってきたうどんは、舌の上に滑り込み、「噛んで」と囁く。

噛めば、発酵バターの豊かで優しい香りを膨らませ、黄身の甘みを広げて、顔を崩させる。

無垢な少女が初めて化粧をしたような、いたいけな艶やかさがあって、どきりとさせられる。

玉子とバターの液で、さらにぬるんとなったうどんが、舌にしなだれる様も、たまりません。

あとは一心不乱。「途中でかけ汁をかけて味を変えてもおいしいですよ」という店員のオススメも忘れて、夢中で食べ終えてしまった。

このコーフンに思う。

上出来の「釜玉うどん」とは、うどんとのディープキスなのだ。