久々に「永楽」に寄った。
周りは大抵「セットと呼ばれる餃子とラーメンである。
隣の男性はそれにチャーハンという剛の者であった。
僕は可愛らしくラーメンを頼んだ。
「そば一つ」。
サービスの女性が注文を通す。
それに応えるわけでもなく、テーブル番号をいうでもなく、伝票を渡すわけでもないのに、目の前でラーメンを作る店主は全て覚えている。
ラーメンや餃子、チャーハンができあがると、「はい、何番さん」と言って手渡すのであった。
これは目黒「とんき」並みのサービスであろう。
さてラーメンと久々のご対面である。
スープの色は濃いが、焦がしねぎの茶色が映えているのであり、決してしょっぱくはない。
ほんのりと酸味が効いているのがよく、玉ねぎの甘みと甘酸っぱい調和を密かに作っている。
麺は細い平打ちで、そのモチっとした食感と唇をすり抜ける時の塗るんとした感覚が心地よい。
チャーシューは、こっくりと煮た煮豚だが、バラバラにして食べると美味しい。
噂によると、チャーシューメンのチャーシューは違うらしい。
ここと渋谷の「喜楽」は味が似ている。聞いたところによれば、互いの創業者は一緒に台湾から日本に出てきた関係で、大田区中央二丁目付近にあった喜楽大飯店という店で二人とも修行し、独立したのだという。
喜楽大飯店の主人は、同郷の人達の面倒を見て、多くの人たちを独立させたそうだが、後継者には恵まれず、昭和60年代に閉店したらしい。