リンゴの中で

食べ歩き ,

リンゴの中で、太陽が息づいていた。
大地と太陽から養分をもらった紅玉は、焼かれ、甘味と酸味を凝縮し、舌にこぼれ落ちる。
そこにはただ甘酸っぱいだけではない、自然の尊厳があって、その品格に、ふうっと充足のため息をつく。
その林檎に、焦げる寸前まで焼かれた生地だけが持つ、凛々しい香りとほのかな苦味が加わって、辺り一面は陽光の刺す山間となる。
これがリンゴのパイ。
気負いも見栄も飾りもなく、どこまでも純粋に、菓子の気品に野生を込めた、「コートドール」のリンゴのパイ。