行列の深層心理

食べ歩き , 日記 ,

<行列待ちの深層心理>
東京の「あんかけうどん」を研究するため、神田「まつや」に向かった。
午前11時5分。開店直後なのに大行列である。
40分並んで店に入った。
目的は「あんかけうどん」であるから、当初の計画では「あんかけうどん」だけを食べて、また次の店で「あんかけうどん」を頼むという「あんかけはしご」の予定であった。
だが、せっかく40分も並んだのだから「あんかけうどん」だけではもったいないと思い、燗酒を頼んだ。
「わさび菜」と「冷やし豆腐」も頼む。
途中で「焼き海苔」も追加した。
さあ酒の時間も終わりに近づいた、そろそろ「あんかけうどん」だなと考えていたら、目の前の人に「もりそば」が運ばれてきた。
「食べたい」。「だがお前はもう一軒行くのだよ」。「もりそば一枚なんて軽いよ」。「やめなさい」。頭の中で二人の声がする。
そこへもう一人が仲裁に入った。
「小雨の中で、40分も並んだのだから、もりそばくらい食べさせてあげなさい」。
「すいません。もりそば一枚とあんかけうどんをお願いします。もり先で」。
もりを勢いよく手繰ると、ほどなくして「あんかけうどん」が運ばれた。
このタイミングの良さ、サービスと板場の見事な連携は、「まつや」ならではである。
しかし問題は、こうして行列を理由に注文を正当化しようとすることである。
いや問題は、「せっかく並んだのだから」と、並んだ時間の元をとろうとする貧乏根性なのかもしれない。
ラーメン屋で行列して、シンプルなラーメンで味を確かめようと思っていたのに、座るなり「全部乗せで」と、並んだ時間の元をとろうとしたこともある。
QBハウスで並んで、2センチカットにしてもらおうと思っていたのに、「3センチカットで」と、言ったこともある。
普段の30分なんて、ぼうーっとしていたら瞬く間なのにね。
「まつや」で後から座った55歳くらいの男性は、座るなり、「大もり一枚」と頼み、滞在時間10分以内出ていった。
横に座っていた72歳くらいの男性は、肴も頼まず、ウイスキーの小瓶を頼み、お湯割にして飲んでいる。
それだけで1時間はいるのではないだろうか。
お二人とも達人である。
僕には到底できそうもない。
時間も使い、腹も満たされて「まつや」を出、次の「室町砂場」へ向かった。
さすがにここでは、「あんかけうどん」だけを食べて帰ろうと決意していた。
しかし「室町砂場」に着くと、また行列が出来ていたのである。
やはり「あんかけうどん」だけでは帰れない。