六本木・東京ハヤシライス
ミッドタウンの一階、カウンターだけの小さな店。ハヤシライスは、甘味と辛味の二種類(各九百八十円、両味千百五十円)。昔ながらの囃子を再現したというそれは、色合いが黒に近いこげ茶。食べれば、甘みが先行するが優しく深いうまみが追随して、ご飯が恋しくなる。小麦粉を丹念に炒めたのであろう、ほのかなカラメル香と隠れたほろ苦味もいい。バランスよく後を引き、ご飯がより食べたくなる味わい。肉は柔らかく煮込まれた豚肩ロース。それに玉葱。甘味のあとから辛味がヒリリと刺激する「辛味」もいいが、やはり王道、おすすめは「甘味」。
日本橋・丸善・MARUZEN CAFÉ
創業者の早矢仕有的が、ありあわせの肉や野菜類をごった煮にして飯にかけ、友人に饗応していたという話から、考案者とされている。
前ビル時代、屋上のゴルフ練習場脇の「ゴルファーズスナック」で供していたが、現在は3Fのカフェでいただける。「早矢仕ライス」は千円。以前のそれより甘味が減り、酸味とのバランスがいい。紡錘型に盛られたご飯の手前になみなみと、艶のある黒茶のソースがかかるさまは、食欲がそそられる。具は、ひき肉とマッシュルーム。具材のバリエーションを変えた、日替わりメニューもある。
御茶ノ水・小川軒
一回のカフェテラスと近いレストランでハヤシライスがいただける。一階はミニサラダつきで千五百七十五円。地階は飲み物つきで千八百円。艶やかなこげ茶のソースがかかったハヤシライスが運ばれると、胃袋そそる芳香が当たりにたちこめる。とろりとしたソースは、酸味、苦味、甘み、うまみすべてにおいてバランスよく丸い味わい。まず甘みを感じ、酸味とうまみを感じ、あとに少し苦味を感じる。ご飯が進むソースでもある。具はほろりと煮込まれた肉と玉葱にマッシュルーム。