丸善創業者が考えたとも、上野精養軒が発祥だとも諸説あるハヤシライスは、一時カレーライスの勢いに押されて、衰退気味だったが、最近勢力復刻の兆しも見える
麹町・オー・プロヴァンソー
れっきとした正統フランス料理店。ここのメニューにハヤシライスがある。「ちょっと美味しいハヤシライス」は、2千級はy九円。昼は、旬の素材を使った、繊細な味わいのオードブルとデザート、飲み物つきのコースで四千三百円(限定五食)。
まず運ばれてきた瞬間に目を奪われる。丸い深皿には、無効にご飯が盛られ、手前から中央にかけてソースがなみなみと注がれ、手前には大きな肉の塊が二つ横たわる。何よりもその艶が素晴らしい。茶、紫、深紅が溶け込んだ、惚れ惚れするような色気のある色合いで、色気をも漂わせて、スプーンを差し込むのをためらうほどだ。
そして目の前に置かれた瞬間に、顔を包む豊かな香り。甘酸っぱく、濃縮感のある香りが誘惑し、脳幹を揺さぶる。口に運べば、肉、フォン、野菜、赤ワインや酒類など、溶け合ったs間ざまうまみが丸く、深く、とろりと口いっぱいに広がっていく。そして濃密なうまみはさらりと、引き潮のように消えていく。
酸の切れ、複雑な香り、うまみの奥深さ、洗練と力強さの協調に、うっとりとなる。牛ほほ肉は、ほろりと柔らかく、一度出したうまみを吸収し、噛む喜びも与えてくれる。素材を一度分解し、それぞれからうまみを引き出し、集結させるというフランス料理のエスプリが込められしハヤシライス。それは甘いご飯とすこぶる相性がよく、スプーン持つ手が止まらない。