名古屋「オーロックス」

肉が舌の上でほどけていく。

食べ歩き ,

肉が舌の上でほどけていく。
肉の脂とオリーブ油が抱き合い、互いに溶け合いながら、甘く輝く。
肉の猛々しい鉄分も、脂の甘みも、微かな酸味も、丸く、丸くなって、舌を滑っていく。
肉は、歯や、歯茎、上顎、舌に、そっと触れ、舐め回し、われわれ人間をたぶらかしながら、のどへと落ちていく。
ああ、もうやめてください。
いやもっと、永遠に続けてください。
そう僕は懇願した。
そして美しいシャンパンをそっと流し込む。
肉と酒は一つとなり、時を妖艶に変えていった。
名古屋での肉神様の還暦会。
「近江牛モモ肉のタルタル」
その叩き具合や、ケイパーやオリーブ油の量などが、これ以上でも以下でもないバランスで成り立ち、肉の味を持ち上げている、素晴らしきタルタルステーキである。
他の肉料理や、シャンパンの話、美酒の話は後ほど。