そしてネギがなくなった

渋谷駅二階コンコースに「二葉」という立ち食いそば屋がある。

椅子席もあるが、調提供システムは立ち食いそばである。

この店が気に入っている理由は三つある。

第一に、おばちゃんたちのサービスが気持ちいい。大量に捌いているのにもかかわらず、入り口で注文して席に座ると間違いなく注文の品を持ってくる。そば湯、ネギ、箸が少なくがなくなれば直ちに交換するなど気配りも早い。

第二に、個性的なメニューがあること。なかでも明日葉てんぷらそば、メカブそばはおすすめである。

第三に最大の理由として、ネギがとり放題であること。大事なことである。

僕は店の豪気かつ寛大な姿勢に応えるべく、いつもこれでもかと大量のネギをそばに投入している。

ネギがそばつゆを吸ってしなり、存在感をなくすのを好まないために、この行為に出ているのだ(それにしても入れ過ぎだった)。
ところが、今日出かけてみたらどうだ。ネギがないではないか!!

「ネギはどうしたのですか」と聞けば、「そばの中に入れるようになりました」とのつれないお答え。

よほど悲しい顔をしていたのだろう、黙って追加のネギを小鉢に入れて持って来てくれたが、これじゃ足らん!

わたしはもう20年もこの店に通っているんだぁ、と暴れようかと思ったがとどまり、さびしく食べ終えたのであった。

事情通によれば、「二葉」は営業利益を年間1億あげているとのこと。私のようなネギ大量搾取客が原因かとは思うが、永年通っていても見たことはなく、おそらく、一日2千円一年73万円のコストカットにはなったとは思うが、それがなんだ。一億もあるじゃないですか。ああ・・・。私の朝のささやかな楽しみを返して。

後日経営陣に聞いた話によると、コストカットではなく、衛生上の理由とのこと

その後「渋そば」に改名となり閉店

 

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