丼に、入道雲が湧いている。
ワンタンは、むくむくと太った姿を見せて、食欲を煽ってくる。
それは一口食べた瞬間に、「うまいなあ」と呟かせ、一心不乱に食べさせてしまう力がある。
ワンタン麺は、「こうや」が屋台だった55年前から、東京の人を虜にしてきた。
魅力の秘密は、まずスープだろう。
豚の拳骨と頭、鶏ガラでとるスープは、臭みなく、脂っぽさもない。
凛々しく切り込みながら、まろやかに舌を流れる。
このスープに、上質な小麦粉を使った、のどごしがいい麺がからんで、笑顔を生む。
そしてワンタンである。
大きなワンタンを口に運べば、唇に優しく触れ、ふんわりと舌に滑り込む、
まさに雲を呑む食感がありながら、噛むと、雄々しい肉のうまみが溢れ出す。
ああ。
心が湧きたつ。
入道雲を見上げた時と同じように、生きる感謝が湧いてくる。