「扁平磨きにチャレンジしているんです」。
106年続く、佐渡島「金鶴」加藤酒造の現当主の息子さん、加藤一郎氏は、そう静かに語られた。
米を丸く削っていくのではなく、平らに、均等に削っていくことによって、ロスなく、米の力を生かした削りを目指すのだという。
酒米は、優等生の山田錦に頼らず、越淡麗や越いぶきなど佐渡県産の米を使う。
中でも力を入れているのは、純米酒拓(ひらく)と、純米吟醸上弦の月である。
前者は無農薬米のたかね錦を使い、後者は無農薬米、自然栽培の越淡麗を使う。
「佐渡には朱鷺をはじめとして、生物の多様性があり、畑はその生物のための役割を担っています。だから無農薬米で醸しています」。
拓の冷酒はおとなしく、初対面に恥じらう少女のようだった。
しかし燗をつけると、少し色気を滲ませたが、まだ気を許さない固さがある。
しばらく置いて、燗冷ましを飲んでみた。
すると柔らかく、純情を滲ませ、エレガントな色艶をじっとりと舌に這わせる。
しかしその芯には、米の命が燃えていた。
それは伝統と自然に敬意を払いながら、さらなる革新を目指す、加藤さんの覚悟なのかもしれない。
もう一つの写真は、現当主の加藤健氏と奥様 。