アブラボウズ。
魚名が身もふたもない。
脂分が40%を占めるとはいえ、もう少し他の名前はなかったんかい。
そう本人は思っているだろう。
このあたりは、メバルやババチャンと同類である。
しかし味はいい。
深海魚特有のヌメプリンとした食感の中に、しぶとい脂がある。
東京の人は馴染みが薄いが、東北人は、密接に結びついている。
八戸「カーサデルチーボ」の池見シェフは、ズッパデペッシェと桜エビと合わせた。
海の豊穣な滋味を湛えたスープの中で、アブラボウズはその身をよじる。
持ち味である脂を、グリグリッと歯に押し付けながら、スープのうまみとともになって、高みに登っていく。
その瞬間、軽やかに桜エビが香って、海の複雑を教えてくれる。