やはりこの人は変態である。
魚が断末魔の声をあげて、そのままミイラ化したにしか見えないこの姿は、「甘鯛のハムユイ」である。
「今夜はハムユイを出します」と、サービスの方が言うので、
「チャーハンですか? ハンバーグですか?」と聞いたのだが
「いえハムユイです」。
「おい、ハムユイだけを食べさせるのかい」と意味がわからなかった。
そしたらこれである。
どういう風に作ったのかはわからない。
しかし由緒ただしきハムユイに仕上がっている。
本場ほど塩気はなく、クチャくないが、ハムユイ臭プンプンである。
しかしそこはアマダイ。品のある甘みがあって、深窓の令嬢が九龍の食堂の主人と恋に落ちましたという危うさが漂っているのである。
しかもこれを白いご飯の上の乗せて掻き込んだらもう。
どんな食通だろうと、理性を失ってしまうのであった。
京都「大鵬」にて。