柿安

食べ歩き ,

牛鍋一大ブームの最中、「柿安」は、明治4年、三重県桑名にて創業した。

すき焼をお願いすると、まず、名物の牛のしぐれ煮が登場する。しぐれ煮は、牛脂と味付けの甘みが、優しく調和して、後を引く。ぐっと牛肉への思いが高まった頃合いに、牛肉をのせた金皿が登場する。

薄紅色の松阪牛は、光り輝き、息を吞むほどの美しさである。

室内の温度だけで、表面の脂が溶けていく。脂の融点が低い、上質な肉の証である。

牛脂を溶かし、肉をさっと焼いて、割り下をかける。

食べれば肉は、、割下と肉の香りが入り混じった甘い香りだけを残して、溶けるように消えていく。

具は、九条ネギに玉葱、焼き豆腐、ほうれん草、人参、白滝、牛蒡にわかめ。わかめも面白いが、牛蒡をからめながら火を入れる白滝が、異なる食感が生まれて、実に楽しい。

しめは、使った溶き玉子をご飯にかけるのがよいが、そこに少ししぐれ煮を混ぜると、おいしいですぞ。