神保町「みかさ」の出来ますものは、焼きそばとイカエビ入り特製焼きそば2種。
潔い。
「焼きそば一つ」。「特製二つ」と、注文が入っていく。
出来るまで、隣りのおっさんはビールを飲み、隣の学生はレポートに赤線を引いている。
「じゃっじゃっ」。海老茶の半纏に、黒白の手拭いを喧嘩かぶりにした店主が、真剣な目で炒め始めた。
ソース焼きそばを、こんな怖い顔して作る人は初めてである。
なにしろ自家製麺なのだ。100食限定なのだ。売る切り終いなのだ。
具を入れたな、麺を炒めたな。奥の厨房で炒める仕草と音で想像する。
「じゃじゃぁああああ~」。音が一段と高くなった。
ソースを投入したのだろう。ああ、焼きそばが来る。
ビールのおっさんもその気配を感じ取って、そわそわしている。
隣りの学生は気づかず、まだ赤線を引いている。
さあ運ばれた。。
特製は、イカゲソと小さな海老(芝エビとはうたってない)入りである。
これで100円増しはいい。
カウンター上には、一味、紅生姜、天かす、ワサビマヨネーズ。
ソースが無いのがいい。
「俺が味を決めてんだ。これ以上必要なし」という、強気がいい。
おや?ソースは甘目である。お多福ほどではないが、お好み焼きソースに近い。
ウースターではない。
この中太自家製麺にはこのほうがあうだろうが、ウースーターが恋しい。
葱とキャベツの細切りは珍しく、そばも豚ばら肉も、良く炒めてある。
一味がけ、紅生姜少し散らし、天かすとそれぞれ楽しみ、混合も楽しんだ。
ゴリ君は「ソース焼きそばに紅生姜入れると、紅生姜味になっちゃって嫌いです」といったが、紅生姜は、量に細心の注意を払い混ぜるか、適時つまんで、アクセントにすると食べ飽きず、いいのだよ。
混合では、天かす紅生姜が、食感と味のアクセントがあって楽しい。
もちろん、ワサビマヨネーズは論外である。