駅弁勝負第59番
「てとて」の「銀ダラ西京焼き弁当」1500円。
最強である。
おそらくこれに勝てる弁当はあるまい。
主役の銀ダラは、分厚く、堂々たる体躯で、ぐんと脂がのっている。
噛めば、はらりと崩れ、しっとりと舌と馴染み、大至急ご飯が恋しくなる。
炊き合わせの野菜は、煮汁の味付けに負けない、椎茸、人参、蕗の香りがあり、シラタキでさえ美味しい。
きんぴらごぼう、こんにゃくとワカメの柚子風味、さつま揚げといった脇役も、品を感じる味付けで、玉子焼きもほどよく甘くて塩梅がいい。
ご飯も上質、すべてに保存料など添加物が入っていないので、後味がすっきりとしている。
点数は、ほぼ満点の9点! であるから、これに勝る弁当はない。
その上さらに、前菜として12品目サラダも加えた。
完璧なる朝食である。
慢心して勝負に臨んだ。
隣は、小学3年生ほどの子連れの推定40代の夫婦であった。
袋から取り出したのはおにぎりで(おそらく、ほんのり屋謹製)、お母さんが一人一個ずつ配って食べ始めた。
がっつくことなく、中に入った具を時折見ながら、ゆっくりと楽しんでいる。
負けた。
質では優っているが、「朝ごはんはこれが一番ね」という無言の主張があって、慢心の弁当マニアは、敗北したのであった。