屋久島の自然に恋をし、他県から移り住んだ人たちに、たくさん会った。
原始の森と川に、海に惚れ込んだ人たちの心根は、まっすぐなのだろう。
みんな目が優しく、澄んでいる。
「じいじ家」で働く、れんげさんもそうだった。
岡山出身の彼女は、肌が弱く、空気に過敏で、すぐ肌を痛めてしまう体質だった。
移り住んだ福岡でも、その他の土地でも肌が痛くなった。
「それが屋久島では、肌が痛くならなかったんです」と、いう。
ようやく住める土地を見つけた彼女は、介護士の仕事を見つけて働き出す。
しかし料理人になりたいと、「じいじの家」のマスターに頼んで、転職をした。
「唯一これだけは作っていいと、マスターから認められたんです」という、「水イカとセロリのバター炒め」を頼んだ。
イカの甘みにセロリの香気、バターのコクの三者が、仲睦まじく染んでいる。
イカとセロリの食感を生かした炒め方もいい。
「おいしいなあ」というと、彼女は
「ほんとですか。嬉しい」と、澄んだ目を細め、からからと笑った。