「いいところだなあと思って」。
27歳の青年は、なにも考えず屋久島に移住してしまった。
「トビウオ漁の船に乗せてもらえるっていうんで、6年間トビウオ漁をやっていました」。
毎日毎日大量のトビウオが獲れる。
しかし傷物などのハンパモノが出るため、知り合いに配っていた。
「ハンパものとはいえ、魚屋に出回る前の新鮮なトビウオですからそれはうまい。でもさばけないからいらないよとか、今日はいいやっていう人が出てきて、余ってしまう。これじゃあトビウオが不憫だ。なんとか生かしてやれる方法はないかと考えたのが燻製だったんです」。
見よう見まねで燻製をし、近所にまた配った。
するとみな喜ぶ。おいしかった、またちょうだいといわれる。
「じゃあ燻製屋をはじめてみようかと、船を降りたんです」。
「けい水産」は山の中にある。コンテナハウスを改良して、作業所と販売所が作られている。。
温燻にかけられた、トビウオ、シイラ、ダツ、オジサン(ひめじ)、めだい、魚の真子やレバー等が、ずらりと並ぶ、
これは魚の生ハムだ。しっとりと歯に食い込んで、噛むほどに凝縮された魚の滋味が溢れ出す。
噛む喜びをわき上がらせる。
「むしって食べてもいいですし、野菜と一緒に蒸し煮にすると魚のうま味が野菜に染みて、そりゃあうまい」という、シイラやめだいの頭も燻製にされている。
よるの二軒目「散歩亭」で、この燻製をピザの具にし、キャベツとパスタにもしてもらった。
燻の香ばしさと濃い魚のうま味がチーズと出会って深みを増し、パスタに絡んで食欲を煽ってくる。
このピザとパスタで、また焼酎が進んでしまう。
困ったなあ。
27歳の青年は
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