薄く薄く切られた生ハムは、ナッツのような甘い香りを漂わせ、唇に優しく触れた。
特有の塩気もある。熟れた濃い滋味もある。
しかしそれらが尖っていない。
どうだうまいだろうという押し出しがなく、丸いうまみだけが広がっていく。
なんときれいな味わいだろう。
うま味が濃密なのに、澄んだ味わいの気配がある。
しかも噛むほどに、うま味は滲み出て、口を満たし、食欲を掻き立てる。
ようやく喉に消えていくと、後には長く、甘い香りが残される。
それはとても淫靡な余韻で、顔をだらしなく崩させる。
岐阜関市、ＢＯＮ　ＤＡＭＯＮのペルシュウ。