やがらは、体長1mを超える細長い魚で、旬は冬だが、こうして夏にもいいやつがいる。
嘴のような吻といい、おいしそうには見えないが、実は繊細な味わいがある魚である。
だが、焼くとすぐ水分や油が抜けてしまって、味気なくなってしまう。
「焼いては出し、焼いては出しを繰り返して、慎重に焼いていきます。火の入れ方が難しい魚ですね。だからこそ上手に生かしたい」。「コートドール」斉須シェフは、そう語った。
写真でわかるように、魚の切り口がふっくらと膨らんでいる。
中のエキスが外に出ようとして膨張してゆく様をとどめた、完璧な加熱の証である。
食べれば、花弁が散るように身がほどけ、口の中で舞う。
しっとりと脂がのった、気品ある甘味が、ゆっくりとひろがっていく。やがらを理解し、思いやった加熱は、繊維質がしとやかで美しい。
これこそ魚調理法の頂点ではないだろうか。
コートドールの全料理は下記にて