鰹のたたきはオラオラ系である」。
しなやかでモチッとした食感であるが、炙った香りと血潮の味が舌に迫り、どうだあと叫ぶ。
さらには、ニンニクや生姜も加担してオラオラぁと気分を煽る。
人は大抵このオラオラにやられてしまうのだが、この鰹料理は違う。
炙った香りも血潮もある。しかし、焼き茄子ソースとサザエのヴィネグレットソースと合わせてみるとどうだろう。
鰹は途端にくつろぎ、いからせた肩をほどき、海へと戻っていく。
人の手をかけながら、うま味を過剰にせず、サザエやその肝、茄子の甘みだけを自然に表出させたソースが、鰹を海に戻す。
地球の同じ生命体としての生きている喜びを伝え、その生をいただく感謝を募らせる。
「自然のありよう」に敬意を払い、人間としての欲や俗をなくし、自然を表した新しい料理は、どこまでも静かで、水の国の恵みに満ちていた。
ヴォンヌ・ターブルにて。
鰹のたたきはオラオラ系である」
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