お姿だけでため息が出た。
焦げもなくふっくらとして、飴色の艶やかな光を放っている。
ご飯の上に色っぽくしなだれながら、尻尾の先端がちょいと丼にかかって折れ曲がっている。その姿がまた、いとおしい。
我に返り、箸をとる。
思いを込め、全身全霊を傾けて、食べ始める。
箸に力を入れるまでもなく、皮まですうっと切れる鰻を、一切れ口に運び、すかさずご飯を掻き込む。
唾液にまみれた舌の上に、脂、タレ、ご飯、それぞれの甘みが渦を巻く。
ただ柔らかいのではない。身がきめ細かく密なので、噛む喜びがある。
こういう鰻は、腹側を舌側にして食べるとよい。
ゆっくり噛んでいくとよい。
脂でもタレでもない甘みが、そっと顔をだし、「ああっ」と、叫ぶから。
「ゆふぐれし机のまへにひとり居りて鰻を食ふは楽しかりけり」 斎藤茂吉
荻窪「安斎」。
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