一分の隙もない。
全国から選りすぐられ、吟味を重ねられた食材と調味料を使い、寸分の緩みもなく精妙に仕立てられる森義文さんの料理は、精密な美しさに満ちている。
それでいて妙な圧倒感や威圧感はなく、どこまでも素直で澱みない。
生から焼いたという水間・木積の筍は、芯に手を触れてはいけないような無垢な甘みがあって、どきりとさせられる。
そんな純真な甘みと焦げた部分の猛々しさの対比が、舌の上をグルンと転げて、命の深さを思い知らされる。
敷かれた生の皮は、下の部分だけ塩を振ってかじれば、土から吸った養分がみずみずしく弾け飛ぶ。
パースニップのすり流し。
太白胡麻油とボッタルガであえた１０割そば。
干し貝柱ときゅうりのペンギン食堂辣油煮込み。
ああ、どの料理も澄み渡って、心に安寧を招きこむ

「カハラ」全料理は別コラムを参照してください