匙ですくい、一口食べて、さほどうまいとは感じなかった。
まずいわけではない。舌に訴えてくるものがなさすぎる。
塩味少なく、トマトで旨味を出していない、野菜がつぶれた薄い味のミネストローネ。そんな感じだ。
二口目によくよく味わえば、春菊のポタージュのようである。
青苦い風味とほの甘さが舌の上をゆっくりと流れていく。
しかし。
三口目から変わった。
後を引き、もう一口食べたくなるのだ。四口目、五口目。
次第においしさが積もってくる。
「これおいいしいじゃないですか」。連れが言う。一同黙ってうなずく。
出汁やフォン、うま味に慣れ過ぎた舌が、すぐに目覚めなかったのだ。
うま味を加えてない、野菜だけの素朴が、訥々と語りかけてくる。
愚直なスープ。
その味に、舌が虚心坦懐に味わう本能を取り戻したのか。
心の内が、ほのぼのと温められていく。
ラオス ルアンババーンの郷土料理だという野菜と鶏のごった煮、「オーラーム」。
ビエンチャン「クアラーオ」にて。
匙ですくい、一口食べて、さほどうまいとは感じなかった
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