醜怪である。
表面には無数の小さなコブがあって、不規則によじれている。
太さは8センチほどあって、大きいものになると10㎝長さ1メートルにもなるという。
千葉県八日市大浦で古から栽培されてきた「大浦牛蒡」を煮物にした。
コブとコブの間に入り込んだ泥を落とすのに苦心しながら洗い、イチョウの一口大に切ろうとすると中に穴がある。
中身も醜いのである。
しかしこの穴に具を詰めた料理を食べて、藤原秀郷は平将門に勝利したと伝わる、ありがたい穴である。
酒と水、醤油と味醂で煮込んでやった。
見た目とは違い、普通の牛蒡より柔らかいようで、30分もすれば柔らかくなった。
齧ると、ほくほくとしている。
火を通した蓮根のような食感で、ほっくりと崩れ、土の香りが漂い、ほのかな甘さが広がる。
それは大地の温かさである。
体をいたわる優しさと力づける逞しさが滲み出て、感謝を述べる。
醜怪ゆえに、なおさら愛おしくなる味なのである。
醜怪
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