<朝からまずい話ごめんなさいシリーズ>VOL8

日記 ,

<朝からまずい話ごめんなさいシリーズ>VOL8
また、まずい話である。
「またまずいですか。もう終わりにしましょうよ」と思われた方。
まともである。
「またまずいですか。今度はどんな話だろう」と思われた方。
人がいい。
知的好奇心旺盛。
食い意地が張っている。
臭い飯を食ったことがある。
勉強家。
Mの気がある。
いずれかに該当する。と、話をそらしたものの、大変恐縮ながら再度まずい話にお付き合い願いたい。
午後二時半、中華料理店Fに入って、半チャンラーメンを頼んだ。
ラーメンに白菜漬け、茶碗に入った炒飯という布陣である。
まず炒飯がいけませんでした。
「強火速攻 鍋自慢」と書かれたポスターには、炒飯の米が中華鍋の上で舞い踊る写真がのっている。
しかし「強火速攻」をやりすぎたのだろう。
ネギは真っ黒に焦げ、玉子はまだらに黒い。
米は疲労困憊していたに違いない。
舞い踊らずに、鍋にへばってしまったようで、百粒位ずつ固まって、モソモソする。
さらにご丁寧なことに、薄味と来た。
もはや完璧である。
そしてラーメンはどうだろう。
これが難問であった。
見た目は問題ない。
しかし最初に一口スープをすすった時、「おいしくないなあ」と脳が呟いた。
まずいのではない。
おいしくない。
だがどこがおいしくないのかわからない。
そこはかとないまずさといおうか、まずさがそっと忍び寄ってくる。
ツルルと麺をすすり、箸を放り出すことなく食べていけるのだが、「おいしくないよね」という気分が、そよ風のように頬を撫でる。
そこで考えた。
なぜおいしくないのか。
スープには、ほのかな酸味がある。
塩味は強くない。
ああそうか。
香りが乏しいのである。
静かで主張がない。
それでいて、微かにすえたような香りがする。
捉えどころのないまずさとは、こういうことを言うのか。
究極の引き算か。
つまり、真綿でじわじわ首を絞められているまずさである。
なんだか急にうれしくなって、今度はレバニラと餃子に挑戦してみようと誓って、店を出た。
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