1994年、共産主義者の男子学生と自由主義者のゲイ男性との友情を、キューバの社会情勢を背景に描いた「苺とチョコレート」という映画がある。
昨夜は、その舞台となったレストラン「LA GUARIDA」に出かけた。
いけている。スペイン統治時代の館をリノベーションした店は、三階までワザワザ徒歩で上がらせ、席に案内される。
時代を経た小物が多く飾られ、雰囲気を妖しくする。
しかもサービスは、美女とイケメンぞろい。
NYやサンフランシスコにあっても、おかしくないスタイルである。
料理は伝統的フレンチに、イタリア料理、中南米料理や、キューバ料理をミックスしたものである。
まずアミューズは、セビーチェと冷たい人参のスープ。ホラこれだけだって、現代風でしょ。オーナーのキューバ人は、恐らく海外を知っている、希有な人なのであろう。渡航許可など簡単ではない国で、謎である。
前菜に選んだ二皿が良かった。
タコスは、燻製したツナをラムで香りヅケし、ケイパーとマヨネースで味つけたもの。
冷たいラザニアは、パパイヤを打ち込んだオレンジ色のパスタは、パパイヤの角切りと小さく切った魚介類と、レモンのコンポートをあわせたもの。
いずれも塩がギリギリで淡く、パパイヤやツナを生かしてある。このシェフなかなかやるぞ。
また「ウサギのパテ」のプレゼンもいい。
メインは、「オックステールの煮込みミラノ風サフランリゾット」。魚介のうま味がうまくにじみ出た「魚介のカレー」、「ラムのロースト、バジルソース」
「ブラックオリーブのカポナータを添えたウサギの煮込み」
いずれも味の焦点が決まって、味付けのメリハリがある。
しかし我が、一番気に入ったのは、キューバ伝統料理である、黒豆を、ラードで炒めた、にんにくと玉葱、ピーマン、豚肉、微かにクミンを入れた「振りホーレ・ネグロ」とバナナのフライ、黒豆の煮込みを御飯と炊き込んだ「モレ・イ・クリスチャーノ」である。
いったいこのやさしさはなんだろう。
砂糖を入れない粒あんと行った風情の甘い豆の力や、熟して少し酸っぱいバナナの魅力、そして御飯に染み込んだ豆の素朴が、なんとも愛おしい。
1994年
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