<駅弁勝負>第4回

日記 ,

<駅弁勝負>第二回

頭の中で悪魔が囁いた
「ナニを迷っている。お前の役目はお前自身がよくわかっているはずだ」。
品川駅で駅弁を買うなら選択肢は二つしかない。
「てとて」の魚をおかずにした弁当か、崎陽軒である。
しかし今日は、「こだわりのとんかつ弁当」を見つけてしまった。
私は食べ歩き人生で多くの教訓を得ている。
① 「こだわり」と自ら名乗るものは、大抵こだわっていない。
②  冷えたとんかつは、とんかつではない(カツサンドは別である)。
それなのに、ああそれなのに、悪魔がそそのかすですよ。
皆さんご存知のように、私は新幹線で隣に座った見ず知らずの人と、弁当勝負を挑まなくてはいけない。
それなのに悪魔がそそのかすのですよ。思わず聞いた
「これメーカーはどこですか?」。
「大増」です。
「ください」。迷わず購入した。
メーカーがNREパッセンジャーサービスなら購入しないぞと決めていたが、NRE大増ではなら買おう。
こうして追い込まれた訳である。
千円。
千円もあれば「いちかつ」や「池上燕楽」のランチとんかつも食べられる。
しかあえて乏しい結果が予想される「こだわりのとんかつ弁当」選び、投資する私は、えらい。
悪魔が指摘するように私の役目は、世間の毒味役であり、味の水先案内人であるから、買わざるを得ない。
という屁理屈をつけて、自分を納得させた。
とんかつは4切れ。百数十gか。
いつものようになにもつけずに、齧ってみた。
当然衣のカリッとした食感はない。
しかし香ばしいのである。
肉はもちろん冷えきり、堅くなり、肉汁は忘却の彼方へ置き去られ、かつて豚肉であったという気配は、微かに残すのみだが、この衣の香ばしさで食べさせるのである。
ううむ。改めてとんかつという料理の偉大さに、感心をした。
ソースをかけ、蓋に絞り出した芥子につけて食べる。
うんこれならご飯が進む。
また不思議なことに、固いことによって、より肉感が増すのである。
「柔らかい」言う常套句を封じられたグルメレポーターが食べたなら、なんと言うのだろうか。
さて隣人である。
おおっ、鶏サラダである。ドレッシングをかけムシャムシャ食べ始めた。
これなら「勝てる」と思っていると、袋から炭水化物を取り出した。
「とんかつドック」である。
ああ、かぶっているではないか。
同じ冷えたカツなら、こちらの方が、量、質、味のバリエーションともに上だぞ。えへん。
とんかつドック食べ終えると次に、鮭わかめにぎりを取り出したが、それを見て勝利を確信した。
今日は「こだわりのとんかつ弁当」で勝利。
いい日になりそうだ。

2018年6月より「三元豚トンカツ弁当」に変更