頼む料理を決めていたのに、路線変更してしまうことがある。
「地物を気軽に食べるなら、長三郎寿司かなあ」。
酒造社長の話を受けて、佐渡の「長三郎寿司」に入った。
しかし頼んでしまったのは、冷やし中華である。
ナスの一本漬けである。
なぜ寿司屋に冷やし中華があるのか?
しかも「アゴ出汁を使った冷やし中華」というコピーである。
これは頼まざるを得ない。
聞けば、「長三郎寿司」は元々食堂で、その名残で、中華メニューがあるという。
魚のつまみで飲んだ後の締めに、中華蕎麦を頼む客も多いらしい。
「冷やし中華」が登場した。「ナスの一本漬け」が運ばれた。
なぜか嬉しい。
缶詰のさくらんぼうとパイン、みかんが載っている。
私は、「冷やし中華果物排除派」であるが、このシチュエーションでは、かえって正しい。
ついでに言うなら、「冷やし中華ハム細切り派」でもあるが、この半分切りの堂々たる姿にも惚れた。
アゴ出汁の冷やし中華つゆは、優しく丸い。
だからこそハムで麺を包み込み、つゆをたっぷりつけて食べてみた。
うん。初めての体験である。
え? 寿司はどうしたかって?
もちろん食べましたよ。
地魚の握り盛り合わせをね。