淡路のでんすけ（穴子）。煮詰めた玉葱そえ。
穴子は生きていた。歯を入れようとすると押し返し、命の様を弾き返す。
火を入れた穴子の、あのふんわりとした食感はない。
これが薪の熾火の力か。穏やかでたくましい火の力か。
皮目を舌側にして食べると、皮の野生が香る。
続いて身に力を入れて、断ち切ろうとした瞬間、穴子の猛々しい旨味が舌に切り込んで、
「なんたる事だ！」と、叫んだ。
生きていること、生かされていることの喜びが、体の中を駆け巡る。
リースリングを飲み、気を鎮めながら再び心の中で
「なんたる事だ！」と、叫んだ。

元町「ヌーダ」にて。