「早く! 早く! 早く飯を出せ」。
十九世紀の始め、パリ開放でやってきた多くのロシア兵が、腹をすかせて大衆食堂に入り、口々に叫んだという。
「早く」はロシア語で「BWEESTRAブイストロ」。
ビストロが店の呼び名と勘違いした、フランス兵から生まれた語源だという。
今も昔も変わりないのは、フランス全土の郷土料理、惣菜を出し続けていること。
手軽な値段で、お腹をたんまりと満たすこと。
民族の知恵が詰まった料理は、温かく、力強く、毎日食べて飽きないたくましさが宿っている。
異国の料理なのにどこか懐かしさがよぎるのは、長年に渡る、母親たちの愛情も染みているからか。