食べ歩き ,

手にずっしりと重い桃から、気品のある甘い香りが漂って、よだれが出る。

たまらずむっちりと張ったお尻に齧りつく。

その瞬間、果汁は口から溢れ、顎を伝い、滝となって縁側に落ちていった。

岡山の家で、桃売りのおじさんから買った桃は、果実というより果汁を貯めた風船だと、子供心に思った。

その果汁は、甘味を超えた品格と色気が混じり合い、舌を、脳をわしづかむ。

熟れきった、最上質の白桃は、もはや果物ではない。