黒石の人は、『大十食堂=ソース焼きそば』という頭になっているのだろう。
『大十食堂』は、町中華といった風だが、多くの人はソース焼きそばである・
創業は、昭和23年で、現主人のお父さんが焼きそばに合う麺作を、開発したのだという。
その麺は、中太縮れで麺モチモチ、しっこりと弾み、そこにソース焼きそばでは珍しい、たっぷり入った玉ねぎがシャキシャキとした歯ごたえでアクセントする。
ソースの甘みに玉ねぎの甘みが溶け込んでいて、その味が豚バラ肉の油の甘い香りと合う。
聞けば焼き干しも自家製で6時間かけて作っているという・
「こんな大変なことは。今は誰もやらないし、僕の世代でこの店はおわりです」。
そう、この店には、手間暇かけることこそが誠実だった時代の、“良き仕事”が生きているのであった。