仁淀川町でキクラゲを作られる「ツボイ農園」を訪ねた。
キクラゲといえば今主流は中国産であろう。
しかし大方が露地栽培されるそれらは、農薬残留が怖い。
やはり農産物は、仁淀川町のような澄んだ空気環境の中で、きれいな仁淀川の水による栽培が好ましい。
「ツボイ農園」のハウスの中では、菌床から目覚めたキクラゲが、体をむくむくと起こして、出荷を待っていた。
黒キクラゲだけでなく、中国では美肌効果かとして珍重される白木耳も栽培されている。
黒とどう違うかというと、白木耳は黒キクラゲの変種としてのアルピノなのだという。
だが中には、先祖返りで黒に戻ろうとする奴がいて、茶色くなってしまう。
それでは出荷できないので、効率が悪く、どうしても黒に比べて高値になってしまうのである。
ツボイ農園のご主人、藤原幸栄さんは、木耳を作り始めて3年になられる。
きっかけは、学校給食だったという。
子供の健康のためにいい食材はないかと調べて、キクラゲに行き着いた・
きくらげは、ビタミンDが豊富で、免疫力を高める。
植物繊維も豊富でとてもいい。
しかし中国産のそれを調べていくと、切って洗わずそのまま乾燥させているものがあって、安全性が怪しいものがある。
そこで県の教育課に電話して「今後も中国産を使うんですか?」と聞いみた。
そこから話が始まり、藤原さんのきくらげが学校給食に使われ始めた。
今ではその品質の良さが伝わり、東京の割烹、神楽坂きなり や、高級中国料理店の南国酒家で使われているという。
早速いただいてみた。
「ポン酢をかけて山葵で食べるのが一番好き」という藤原さんの言葉通りにやってみた。
黒はまず、市販のよく出会う頼りなさが一切ない。
噛めばシャキシャキと音が立つほど歯ざわりが痛快で楽しい。
本来きくらげとは、こんな凛々しいものなのだろう。
次に白きくらげを噛めば、ヌルッとしている。
きくらげのコラーゲンだという。
このコラーゲンの食感があるからこそ、中国では珍重されてに違いない。
聞けば黒きくらげの痛快な歯ざわりも、白キクラゲのコラーゲンも、寒暖の差があってこそ出るのだという。
温かいとこらでの栽培は、食感がベタつくのだとか。
仁淀川町の山深い環境だからこそ生まれた食感なのだろう。
今では県内より大阪や東京への出荷が多いという。
理由を聞けば、藤原さんは言われた。
「都会の女性は、健康志向が強いですが、田舎の人は健康と言わないですから」。
そうだろう。
こんな空気のきれいなところに住んでいたら、きくらげも人間も健やかに過ごせるに違いない。