人間は空より高く跳べるのか

食べ歩き ,

人間は空より高く跳べるのか。
名工の作品は、そのことを問う。
神の精緻で作られた有田焼の茶筒は、極めて優れた機能を秘めながら、物言わぬ磁器が、そっと自然を自らの中に抱き、生き続ける美を謳う。
ロクロと生地加飾(掘り)の天才、現代の名工である奥川俊右衛門の作品を前にして、黙す。
圧倒的な技と集中力、鋼のような精神が作り上げた芸術に、人間の果てしない可能性がある。
この茶筒の上蓋は、0,1ミリの狂いもなく、上げれば柔らかく、閉めるときは空気を抱えながら自動ドアのように勝手に降りていく。また中蓋も寸分の狂いもなく、逆さにしても、落ちることなく、小さな音さえ立てない。
また立ち上がりの薄きこと、雲母の如し。
どうして、型を使わず、人間の手とロクロだけでこのような精緻なものができるのか。
焼いて形が変化することを計算に入れながら、なぜにこのような精確が生まれるのか。
そして掘りの技は、実際に目にしながら、信じることができない。
竹籠は、恐ろしいまでの精巧さと優美さを兼ね備えて作られ、光をかざせば鳥が隠れているという、洒脱さを秘めている。
上蓋の竹籠も、曲面に掘られているのにもかかわらず、気が遠くなるほどの精度である。
さらに誰も見ない中ぶたの裏にも、より細密にした竹カゴが掘られているという小粋さ。
ここに有田焼の深淵がある。
器を芸術域に高めた、人間の執念がある。

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