ヤギはヤギである。

食べ歩き ,

ヤギはヤギである。
断じて、羊でも豚でも鶏でもなく、ヤギである。
そんな当たり前のことがわからなかった。
羊より淡く、純朴で、鶏より野生で、豚よりも肉々しい。
誰が臭いといったのか。つぶしたてのヤギは、臭みなどはまったくなく、噛むと、乳の香りと草の香りが入り混じって、ふわふわと抜けていく。
ヒレの生は、優しさの中に強情を忍ばせて、シンタマは噛めと叫んで、滋味を絞り出す。
背肉は シャンカールさんの作ったカレーと丸く抱き合って、全員に笑いを贈る。
脳は、危険な食感と味わいで心を溶かす。
そしてレバーはどうだろう。
かすかに鉄分の香りがあるが、どこまでも澄んだ味わいで、まだ命の純粋がある。
それでいて舌の上で潰れていくと、濃密な、しぶとい甘みが染み出してくる。
純粋と濃密。それもまた生の証である。
生の味はまた崇高でもある。
目をつぶりながら、まだ頭の中で響く、断命の鳴き声を思う。
深く、深くこうべを垂れながら、ありがとうの言葉を胸に刻む。
岡山「ルーラルカプリ農場」にて。