「バーは社交場なのです。お酒を通じて皆さんとお話が出来る。初めてあった方達が心が通じ合える。そんな場所だから80過ぎても楽しくてしょうがないんです」
そう千頭さんは嬉しそうに笑った。
「これ、素晴らしいエスプレッソなんですけど、輸入中止になってしまったんですよ。もう売るほどないから少し飲んでみますか」
そういって薄茶色の液体をリキュールグラスに注いでくれた。
飲むと、30度あるとは思えないまろやかさで舌に喉に、少しもひっかからない。
それでいてコーヒーの凛とした香りがある。
丸く、優しくありながら、奥底には揺るぎなき尊厳と挟持を持っている。
老いても尚ダンディで、きりりと生きている
それはまるで、千頭さんそのものではないか
バーは社交場なのです
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