おいしい弁当とは、なんだろう?
恐らく、多くの皆さんが思い浮かべるのは、母親のお弁当ではないだろうか。豪華も質素もあろうが、そこには、元気に大きくなってほしいという、共通の思いが流れている。
あざとさも、見栄もなく、ただ食べる人のことを考えた、真っ直ぐな思いやりを詰めた弁当。それがおいしい弁当ではないだろうか。
すると必然的においしい弁当の姿は見えてくる。おいしい条件は、以下の通り。
①ご飯がおいしい。米自体が固からず柔らかすぎず、また、ぎゅぎゅうでも緩すぎもしない、ご飯に気を配った詰め方をしている。
②分をわきまえている。背伸びをしたり、やたら豪華な食材を使わない。売らんかなやウケ狙いの姿勢がない。
③冷えてもおいしいおかずが入っている。冷えておいしくなるような味付けがしてある。
④幕の内の場合は、三種の神器、焼き魚、玉子焼き、蒲鉾の質がいい。
⑤味が濃いのは致し方ないが、味付けが甘すぎない。
⑥出来れば、化学調味料や着色料を使っていない。後味が悪く、消化もよくない。
⑦バランスがいい。味の濃淡、食感の違いなどに配慮されていること。
以上の7つである。従って選ぶには、①ご飯の状態を伺い、②海老や帆立など豪華そうに見えるおかずが安易に入ってないかを観察し、③価格が千円もするのに、冷えて不味いフライや天ぷらが入ってないかを見、④おかずの色合い合いが渋い方をよしとする。
こうして選んだベスト5は、5常盤軒の二段弁当、4人形町今半のすき焼き弁当、3「てとて」の一連の魚の弁当、2永遠のアイドル「シウマイ弁当」、1横川おぎの屋の「玄米弁当」である。
最近は、どうも分をわきまえぬ、派手な弁当が多いように思う。思い出すのは大阪駅から撤退させられた、水了軒の「八角弁当」や、これまた駅から消えた、京都萩乃家の「精進弁当」である。
醤油もソースも添えず、丁寧に味付られたおかずには、冷めても美味に、徹底的な安全度で提供するためになすことは何かを承知した、思いやりが詰められている。